もう探す所など何処にも無かった。
その上、完全なる不審者と化していた私達は、
「この高卒と高校中退の能無しどもめが」 と土色さんにお叱りを受けるのを覚悟で、
再び電話を入れてみることにした。
股 「無いもんは無いわ」
土 「じゃあやっぱり、そこが答えじゃなかったのかなあ…」
股 「誰が見ても怪しい宝箱でしょ? 無い」
土 「3階の東ってそこだけなんだよね」
股 「あとは、他に考えられるとしたら、テレビ塔の東側から数えて3本目の脚部分とかさ…。
一応、これから外に出て全部の脚部分を確かめて来ようと言ってたとこなんだけど、
でも、そんな出入口付近に派手な宝箱とかが有ったら、誰かに持って行かれると思わない?
そんなとこに置くかな…」
土 「いや、確かに過去に、屋外に置かれていたケースも有ったんだよね」
(決して 「もういい」 とは言わない土色さん)
股 「そうなんだ。じゃあ行ってみる価値は有りそうだね。見て来るわ。
でっかいんだよね?その宝箱は」
のようなイメージのやり取りを、比較的大声でしていた土色さんと私。
と、その時であった。
綺麗めな姉ちゃん
「もしかして、宝箱をお探しですか?」天の声かと思った。
信じられないかも知れないが、一瞬頭の中でBGM的なものすら鳴ったような気もした。
曲は、なんかフワーっとしたやつ。
綺麗めの姉ちゃんの正体は、次に最上階の展望台へと向うお客様をエレベーター前で待っている
待機中のエレベーターガールだった。
言われてみれば、さっきから幾度となく目にしていたお姉ちゃんだったが、
お姉ちゃんは常にロープの向こう側に居て、
展望台には一切用事を見い出していなかった私達との接点はまるで無かった。
が、この時はたまたま、土色さんと私の電話でのやり取りが比較的相当な大声だったことから、
たまたまお姉ちゃんも 「宝箱」 というワードに気付いてしまったに違いなかった。
「は、はい! 宝箱です!!宝箱を!!」私は即座に食いついた。
横の田端さんも、初めてザリガニを見つけた時の少年の目でお姉ちゃんの頭部を見詰めている。
姉 「それでしたら、多分こちらです。
ご案内しますので」
股 「そちらに有るんですか?宝箱」
姉 「はい」
股 「タカラッシュっていうところの、謎解きクイズの…」
姉 「そうです」
ことごとく自信マンマンに即答してくるお姉ちゃん。
言われるがままにお姉ちゃんの後を付いて行くしか無かった。
「茶髪やなあ…。真っ黄っ黄やな…」 と小声で呟く田端さん。
恐る恐る歩みを進めていると、3階の西奥の受付カウンターに連行されていた。
股 「ここに有るんですか?宝箱…」
姉 「はい。 じゃ、お願いしまーーす」
エレベーターガールのお姉ちゃんは、続きのあれを受付のお姉ちゃんにバトンタッチした後、
エレベーターの任務へと戻って行った。
横の田端さんは、初めてBまで行った時の少年の目で受付のお姉ちゃんの頭部を見詰めている。
が、そこで受付のお姉ちゃんはこう言った。
「宝箱はこの奥に有るんですが、
ここからは有料になっておりまして…」お金を取るらしい。
股 「どうする?」
田 「ここに有るんやろ? 行くしか無いやろ」
田端さんは迷わず尻ポケットから戦闘用チェーン付き本革仕様のウォレットを取り出した。
田 「お幾らですか?」
受 「ここの料金は300円なのですが、ただ…、
この企画は展望台観光とセットになっておりまして、
一旦展望台の方を観光して頂いてから、ここに戻って頂く形になってるんですよね。
なので、展望台の料金を含めて、お一人様1000円を頂戴する形で…」
股 「そういう形だとさ。 どうする?」
田 「ここに有るんやろ? 払うしか無いやろ」
財布を出そうとすると、田端さんは迷わず 「ええよ」 言ってスッと2000円を支払ってくれた。
その横で、私は再び土色さんに電話を入れた。
股 「有料だったわ」
土 「はい?」
股 「展望台観光したら辿り着けるらしい」
土 「ちょ、ちょっと待って。 それ多分違うわ」
股 「え?」
土 「他の企業の別のイベントに巻き込まれちゃった可能性が高い」
股 「はあっ!?」
一旦土色さんを置いといて、私は直ぐさま姉ちゃんに確認した。
股 「あ、あの、間違いなくこれで良いんですよね?
依頼して来た友人が、これじゃないって言ってるんですけど…」
受 「いえ、これですよ。
館内で宝探しのイベントと言ったらこれしか有りません。
ねぇ、無いよねぇ…(←周囲の同僚の姉ちゃんらと確認し合いながらザワついている)」
股 「これに間違いないって言ってるよ?」
土 「いや、違う。料金取るなんて聞いたことない」
田 「(もの凄い小声で) せっかく親切に教えてくれたのに失礼やから。
なんでもええから行くで。行かなしゃあないやろ」
股 「なんでもいいからとにかく行って来るわ!!」
親切に案内してくれた挙句嘘吐き呼ばわりみたいなことにされてしまったお姉ちゃん方に、
ひたすら平謝りするしか無かった私と田端さん。
「名古屋の人なんですよ。しかもアホなんですよ。
札幌の事情も礼儀もよくわからなくて…(笑)」
そんなようなことを付け加えたような記憶も少し有る。
そうして手続きを終えると、今度は受付のお姉ちゃんに誘導されるがまま、
まったくもって予定していなかった最上階の展望台を目指し、
先程のエレベーターガールのお姉ちゃんが居る所まで連行された。
股 「あそこから入ると、このロープの内側に入れるシステムだったんだね」
田 「茶髪やなあ…。 受付の女も真っ黄っ黄やったな…」
が、ここへきて、ここまできて、一つ、大きな誤算が有った。
誤算は全部で16個ぐらい有ったが、
ここまで大きな誤算はこれ一つだった。
何故、「もののついでに風月でも」、は予定していたというのに、
「もののついでに展望台観光の方も」、についてはまったくもって予定していなかったというと・・・
そう、私はものごっつ高い所が苦手…
『高所恐怖症』 というやつだったのです、言うなれヴァ。
例えばジェットコースターやフリーフォールのような、
高いと所からザッサーー!というタイプのものは平気というか、むしろ大好きな方なのですが、
観覧車やロープウェイ等、長いとこ高所に滞在させられるようなタイプのやつがダメなんです。
展望台もまさに、ザッサーー!と降りてくるようなタイプのものでは有りません、決して。
乗り込むなり、そのどこからも外が丸見えなタイプのエレベーターは、
どんどこどんどこと天に向って行きます。逆に。
一瞬にして顔から血の気が引き、その場に座り込んでしまった私。
その状況にドン引きしつつも薄笑いが漏れてしまってるのがバレバレな同乗のババアら3人。
横の田端さんは 「大丈夫か」 とか言いつつもほぼ苦笑いのみ。
が、一番噴き出しそうになっていたのは、
エレベーターガールのお姉ちゃんだった、何を隠そう。
なんでこんな恐い想いしなきゃならないの…?
私だけが心の中でそう呟いていた。
4階、展望台に到着した。
股 「どこが4階なんだよ」
田 「3階から4階までの距離がもの凄いことになってるシステムなんや、ここは」
最初から素直に 【50階】 とかにしてくれてれば、
ある程度の覚悟をするなり乗らないなりの措置が取れるものを、こっちだって。
【4階】、言うから…。
というわけで、私は極力前傾姿勢を取り、
田端さんの方も別段なんら感動してるような素振りを見せることもなく、
ザザーッと3分ぐらいで観光のようなものを済ませた私達は、
とっとと宝箱の在り処へ向おうと再びエレベーターに乗り込んだ。
帰りのエレベーターはとても楽しかった。
再び3階の地に降り立った。
受 「お帰りなさいませ」
股 「本当に色々とありがとうございました。
では、早速で申し訳ないのですが、宝箱の方を…」
受 「どうぞこちらへ」
「あちらです」


一瞬、手前の望遠鏡の土台と、同じ感じの右隅の四角い物体に走りそうになったものの、
それは速やかに発見できた。

間違いない。
土色さんの、「誰が見ても明らかな」 というのにはちょっと遠いような感じも否めなかったが、
正真正銘の宝箱であり、何より、
鮮明に 『タカラッシュ』 と刻まれていた。
これで、土色さんが言っていた、
「他の企業のイベントに巻き込まれた」 という線も完全に無くなった。
宝箱を開けてみた。

これだ。こういうのでこそ暗号だ。
やはり、『テレビ父さんはでっかいどう』 ではなかった。
そして、よくよく見てみると、写真のように、
更に 【チケット売り場でカードをもらえ】 みたいなことが書かれていたので、
これが最後の仕事と意気込み、颯爽とチケット売り場に向ったところ、
そのカードはカウンター上にズラリと10種類ぐらい並んでおり、
どれを選べば良いものかさっぱりわからなかったので、
再び土色さんに電話を入れて確認した。
股 「カードはどれを選べばいいの?」
土 「カード?」
股 「チケット売り場でカードを貰えって書いてあったから来たんだけど…」
土 「ああ、それはね、なんでもいいよ。股子の好きなやつで」
股 「そんな安易な感じでいいの? クイズには影響しないの?」
土 「うん、無い」
と言われても、私の好きなデザインというのも特に見当たらなかったし、
念の為、チケット売り場のお姉ちゃんに確認してみた。
股 「あのー、これってクイズの回答自体には関係ないんですか?」
受 「いえ、有ると思いますよ?」
股 「(有るんかい!)」
心の中で叫んだ。
そして、一旦待たせてあった土色さんに再度確認した。
股 「関係有るって言ってるけど?」
土 「いや、いいんだ」
いたちごっこだった。
しょうがないので、10種類の中で最も数が減っていた、
こちらのカードを選んだ。


これで今度こそ、今度こそいよいよ、全てのあれは完了した。
田端さんは、上の宝箱と暗号的なものの写メの全てを、土色さんに送信した。
が、土色さんは言った。
「違う。 これじゃない」 と・・・。
(第四夜は響きが悪いので飛ばして第五夜へつづく…)